31.

 アリスは部下には考える時間を与えずに出来うる限りで計画をタイトに推し進め、反感が表に出ないように腐心した。
 あれは一時の激情に駆られての命令だったから、冷えた頭で考えれば処刑はやりすぎで、死なない程度の鞭打ちに留めておくべきだったと思っていた。だが、もう遅い。やってしまった事を消し去る事は不可能だから、何か別の事で上書きしなければならない。まずは仕事で忙殺にする事だ。それで要らぬ考えを大方は抑える事ができる。一度渡ってしまったのだから、やれることをやれるだけするのだと、彼女は自分を追い詰めていた。
 それが結果的に所要時間の短縮に繋がり彼女が計画していたよりも任務は幾分早く完遂した。
 今はウェクティスに向かって帰還している途中で、開けた平野に野営している。後、10日もすれば指揮権をマリウスに返す事になりそうだった。再び一つに統合される傭兵団の中でどれだけのポストが用意されるか分からないが、目下1年振りくらいに四苦八苦しながら作成している報告書の中身を見ればマリウスは彼女に大した役割をくれそうにないと惨めな気持ちで思った。適当なミーネのお守りか何かを押し付けてそれで終戦まで行くかもしれない。きっと成果以外の査定はマイナスだろう。
 こうして、僅かながらも祖国への貢献をしている中、戦況はよく分かっていない。情報が国王陛下と共に移動した本営のウェクティスにまで帯同しているミーネを通してしか得られない為にタイムラグが酷いし、場所を転々としていることも影響して通信するだけでやっとだった。その数少ない通信の中で少なくとも1度は会戦で敗北しているのだけは知っている。という事は国王陛下の思惑通りに進んでいるのだろう。国土に張り巡らされた罠に(どんな罠か皆目見当もつかないが)敵は踏み込もうとしている。目の前にただ、鴨をぶら下げられただけで。しかし避けえられない。ミーネも述べていた事だが敗北をなしに、それもけちの付けようのない勝利続きで歩みは止められないだろう。もし止められるのであればそれは敵将の優秀さと勝利に相応しき振舞いとして受け取られるだけで、ただ、止まるだけという簡単な決断は人間の弱さを攻めるには十分過ぎる。
「あれはやりすぎだよ」
 非難がましい声色にアリスはペンを止め、その声の方に顔を向けた。バルナバが面会を申請していたからそれに応じると、彼は天幕に通されると同時にそんな事をいったのだった。
「そんな事は分かってる」
 アリスはペンを置き、身体ごと彼の方を向いた。彼の神妙そうな顔とは反対にうっすらと笑みさえ浮かべて。見る者が見ればこんなのはただの虚勢に過ぎなかったが幸いにバルナバはそんなのに心付いたりする類の人間ではない。
「じゃあ、なぜ」
 言いかけた言葉を更に目を遣って黙らせる。
「うるさいな。もう過ぎたことだ」
「過ぎた? ふざけるのも」
 実際、幾日か間隔が開いていて印象も少しは薄らいでいる。怒りも向け所がなくて鈍っているようだ。バルナバはそれを認めたのか口を噤み、何か考え直してから、話題を若干逸らした。
「隊長たちは部下を抑制するのに大変だ」
「正当な手順は踏んだ」
「そうは言っても、生殺与奪を握るのは間違ってる。君は彼らの主ではない。同志だぞ」
 アリスはもう完全に取り繕う気持ちも失せてしまっていたから、最も厳しく効率的な道を選んだ。
「だが、規律を乱せば罰せられる」
「その所為で、団は恐怖で一杯だ」
 その言葉を聞いて、アリスは意外と事がいい方向に進んでいるのではないかという事に気が付いた。少なくとも傭兵たちはアリスに大きな反感を抱いたかも知れないが同時に恐怖も感じているらしい。
 残酷な指揮官、軍紀違反には厳罰を以って臨む姿は彼女の若さや未成熟さを完全に霞ませてしまっていた。隊長たちが内心はどうあれ、従った姿がそれに拍車を掛けている。処刑の命令を実際に実行したのは騎兵隊の第2隊長で、元々のアリスの副官が今までの習慣に従ったに過ぎなくて、それはいわば必然というべき事柄で、それだけで全員の隊長がアリスに盲従している事にはならなかったがそれを見抜く者は少なかった。積極的な反対でなければ黙認も消極的な反対もあまり変わらない。
 ともかく、彼女の暴走は意外な結果に終わりそうだ。少なくとも彼女の指揮権が惰弱になる事はありそうにない。
「高々3人の命で規律を維持できれば欣快だな」
 それで少しばかり心にゆとりができた。そう見せかけるのではなく、本当のゆとりが。
「恐怖で支配するなんて愚の骨頂だ」
 本気になって語調が荒くなるバルナバを後目にアリスは
「哲学ではそうかもしれん」
 皮肉を浴びせる余裕も出てきて、自分の失策を軽微なものに見せかけるような演技もできた。
「アリス……」
「敬称を付けろ」
 尊大で傲慢な物言いだった。何故か名前で呼ばれるのに我慢がならなかった。別にバルナバがどうこうという問題ではない。だが、彼にはそんな事を理解する取っ掛かりがないので、アリスのこの発言はそれなりの衝撃をもって受け入れられたようだった。  傭兵団の中では一番の友人で、歳も近い。他に友人もいないアリスを周りから浮かせないように骨を折ってもくれた彼だったが、もはや生きる世界が違った。いずれ同じ場に上がってくるかも知れないが今は違う。同輩以上でない人間にファーストネームで呼ばれた事はたかが傭兵団であるから些細ではあったのかも知れないが彼女の低い沸点を簡単に刺戟した。尤も、ここまで精神を削られていなかったら、そんな短気な素振りまでは見せなかったのかも知れなかったが。
 勅命を帯びる身と指揮官という部隊長とは全く別次元の仕事は未熟な彼女の精神を容易に侵食していて平衡感覚は大分危うい。その発露の一つが多分、処刑の顛末だったのだろうが、あれだけで収まるはずもなく、他にどこか捌け口を見出さなければとても耐え得るものではなかった。些細な切っ掛けだったが、それをまた彼女は本能的に探し当てた。
 バルナバはアリスから突き放すような事を言われて本当にショックだったらしくしょげ返った顔を見せた。それはアリスを満足させるだけだったが、そういうものを感じるような機微は彼にはない。
「もういい。下がれ。状態はよく分かった。善処はする」
 何か言いたげな表情をのぞかせたバルナバはアリスにじっと見詰められると何も言わずに下がった。
アリスはまた仕事を再開した。
順調に、――報告書の作成以外は順調に――彼女を煩わせることは殆どなく数日が過ぎいよいよウェクティスに数日の距離に迫った頃、それは起こった。
 長大な報告書の作成に意識を総動員していた最中、団員の一人が駆け込んできた。
「アリス様」
「何だ?」
 此処最近でもう御馴染みになった不機嫌な視線を向ける。兵士もそれに動じることなく己の仕事を実行した。
「兵士と接触しました。哨戒兵が対応しています」
「ガラッシアか」
 可能性としてはそれが1番大きい。
「はい。兵装の限りはおそらく」
「私も行く」
 手早く服装を正してマントを羽織らせてからアリスはそこに急行した。ガラッシア兵がここにいるということは状況がかなり動いていることの証だ。
 警戒線の最も外れで、男が何人か言い争いをしていた。2人の男が5人ばかりに囲まれて何か言い合っている。
「どうした」
 アリスが来た事に気付いた傭兵団の人間は水を打ったように静まり返った。何も知らないガラッシア兵と思われる男たちがその反応を見てアリスが上司だと見て取ってその矛先向けた。
「お前らはどこの所属だ」
 数では劣勢のクセに随分と尊大な態度だった。ガラッシアの軍人はその軍属を誇りにしているからそのような態度に出るのであろうが。
「マリウス傭兵団。お前らは?」
 アリスもまた横柄で、その対応は彼らの神経を逆撫でしただろうがアリスを騎兵だと取ってそこまで露骨に感情を表さなかった。 「ガラッシア王国ラクティア属州第10軍団」
「ラクティア。東か。確かファビウス総督の軍だな。国境に向かった」
 それくらいの知識はアリスにもあった。少なくとも最近に詰め込まれた。その国境に向かった軍の一つが今ここにあるという事は、色々なことの推察を可能にするがそれはひとまず置いておいた。というのも、彼らに対応するだけでなく、他にも対応すべき人間が姿を表したからだった。更に10騎ばかり。中央に誰か居て、それを守るようにして他の騎兵が囲っている。その中の一騎が進み出た。
「何の騒ぎか」
 先遣の者よりずっと偉そうで実際に偉いのであろう、赤のマントを羽織った騎兵だった。
「貴公は何者だ。こんなところで何をしている」
「マリウス傭兵団。作戦行動中です」
「味方か」
「敵であれば、対話など致しますまい」
 その男はアリスの返答を聞いて1度後ろに下がって上官にそれを報告した。彼は先触れで本当の上位者は別の誰かなのだ。
 報告を聞いて何か思ったのか護衛に囲まれてよく見えなかった彼は、護衛を制してアリスの前に姿を表した。
 藤色の髪。兜をしていなかったから容易に顔が判別できた。
 とても軍人には思えない整った高貴な顔立ち。
「セレン?」
 珍しく声に慌てた色を含ませたアリスに傭兵団の面子が驚いて彼女を見たが、アリスはそんなことに気を払いもせずに、彼の方に目を向けていた。
「アルトゥーラか」
 迷惑そうな色をいくらか含ませて、彼は目を合わせた。彼にそんな態度を取られ、アリスは驚いたが、その訳に思い当たって態度を一変させた。
「ルキヌス様」
 それでようやくセレンの態度が友好的なものに変わった。明らかに何か特異な状況でその地位に就いているのだろうと予測できたから、彼も彼なりにその地位を守ることに腐心しているらしい。少なくとも、傭兵団風情から気安く呼びかけられることは何かをひどく傷つけるのだろう。
「野営地か」
 セレンは呟き、空を見上げた。傾いて久しく日も落ちてきている。
「マメルクス。今日はここで野営する。準備を」
 マメルクスと呼ばれた先触れはその指示に若干の違和感でも感じたのかアリスの方をちらりと見たが、それ以上の反応を見せずに、セレンに敬礼をしてから後ろに続いているだろう軍団に指示を飛ばしに馬を巡らせた。
「あの」
「終わったら人を遣る。夕食に招待しよう。受けてくれるね?」
 彼女が頷くと、彼は少しだけ表情を綻ばせた。
「では、後ほど。まだ、仕事が残ってる」
 言いようのない安堵を感じたのをアリスは戸惑いながらも認めないわけにはいかなかった。周りの殆どが変わってしまって自分さえ変わって見失っていた中で、ごく僅かな変わらないものを見つけた気分だった。彼も外見も肩書きも全然変わってしまっていたが、本質は何も変わっていない。つい数年前は同じ立場に居たはずなのに何時の間にか貴族の権化のような男になっていて、人を見下しているのがはっきりと分かるがそれでも人が付いていくような変な魅力のある人間で、何故かアリスを安心させて、平常心へと回帰させてくれる人間だ。
 こういう人間がカリスマがあるというのだろう。
 それはともかくとして、この時から彼女の外に対する態度が微かに変わった。変わったというよりは元に戻ったという方が適切かも知れない。鯱張っていたのが取れて少なくとも部隊長としてそれなりに評価されていた時の人当たりには戻った。何で人間変わるか分からない。
 夕方から夜に変わっていく時間帯、彼からの使者を妙にそわそわした気分で待って、いざそれが着たら、逆に今度は夕食についての知識など持ち合わせていないことに急に気付いて行きたくなくなったりしたが、今更断れるはずもないことくらいは分かっていたから、渋々ながらそれに付いて行った。
「やぁ、久し振り」
 セレンは先ほどと打って変わってフレンドリーに接してきた。それでアリスの気分もいくらか解れた。
 その日の夕食は傍に控えている従者を除けばセレンとアリスの2人だけだった。アリスは従者に勧められるままにテーブルにつき、セレンは反対側に向かい合う形で座った。
「他に人間がいると喋り辛いからね。君とは」
 あけすけにセレンは言った。その意味を量り損ねるということはなかったし、いつも苦労のないように見えていた彼も流石にガラッシアという大きな枠組みの中では相応の努力が要るのだと感じただけだった。
「私、テーブルマナーなんて知らない」
 そんなことは彼も百も承知だった。
「私しかいないよ。――それでも気になるのなら、私の真似をすればいい」
 夕食は和やかに進んだ。アリスは綺麗にセレンの真似をしたので、食べている心地はしなかったが、それはこの場ではほんの細事に過ぎない。
「あれからまた出世したね。どれだけを指揮下に?」
「騎兵隊を2つに歩兵隊を2つ。ミーネの指揮下だが、実際の指揮は私が」
「ルクセンブルクはあまり軍事が得手ではなかったね。上手くやってるの?」
「――ああ。お前はどうして軍団を?」
 返答が微妙に遅れたのを彼は見落とさなかっただろうが、アリスがこう答えた以上その話題を先に進めなかった。
「軍団長が一度目の会戦で戦死してね、それからはずっと私が。随分早く引っ張り出されたものだよ。苦労が絶えない」
「よく統御されているように見えるけど」
 セレンは肩を竦める。
「見かけはね。私は何の実績もないし、ファビウスを名乗っても経歴が不明だから、信頼はどうかな」
とは言いつつもあまり口調に深刻そうな響きはなかった。
「でも、一度目って言った事は二度目もあったんだろ?会戦」
「戦功は立ててない。私たちの軍団は戦力の維持が任務だった」 「どういうこと?」
 そこからは、現状下の情勢が話題を独占した。軍人同士の会話などそんなものだろう。
「陛下としては今の段階での会戦は避けたかった。偶発的な事柄に左右されるし被害の想定が難しい。でも相手をウェクティスまで引き付けないといけない。無傷でというのは無理な注文だし、会戦を避けてばかりいると相手にも気取られる」
「会戦で負け、しかし、被害はごく最少で、ずるずると撤退する。それが最上だ。そして、それを尤もらしく見せるには本気で勝とうとする指揮官と勝敗を調整する別の人間が必要になる」
「捨て駒か」
「まぁ、そうなる。事実指揮官は戦死した。何も知らされていない指揮官がね。彼は哀れだったよ」
 そう言った彼の口ぶりにはまったくそう思っているようには見えなかった。
「しかし、それで敵方は勘違いしただろう。何千人かとの命と引き換えに。今はどこにいるかな。さして遠くないことは確かだ」
「お前はどれくらいの位置で撤退を?」
 それは意外と重要なことだった。傭兵団が撤退している正規軍と鉢合わせたのは今日が初めてで、セレンが置かれた位置如何によっては傭兵団も捨て駒になっていたと勘繰れる。
「殿ではないが、かなり後ろの方だ。君に会えたのは君にとって幸運だったかも知れない」
 そのことを彼も十分に気付いていた。
「所詮は傭兵か」
 苦々しげに言っても彼は正規軍でこちらの気持ちなど全く理解してくれなかった。いくら過去に傭兵であったとしても、永遠にそれしか望むものがない人間の気持ちなど彼は分かりはしない。
「仕方のないことだ。上手く使われて、しかし、尊重はされない。それを肯じられなければ傭兵なんてするべきではないよ」
 これはもう不毛な言い合いになるだけだったので、再び話を変えた。
「それで、これからの展望は?」
 ようやくセレンの目に真面目さが帯びた。冷徹で激しい目だ。彼にとっても自分の意見を述べられるのはアリスの様な全く外の存在だけなのかも知れない。彼の行っていることは国王陛下の考えを批評するということなのだから。
「陛下はウェクティスで対峙されるお積りだ。そこまでアエテルヌムの軍は一つに纏まって進むだろう。地の利のない場所で戦力を分散させても益はない」
 相槌を求められた気がしてアリスが頷くと彼は話を続けた。
「前哨戦ではガラッシアが敗れている。こちらの士気は低く、相手は意気揚々だ。しかし、国土の四分の一まで侵入を許したことによってこちらに利点もある。――何があると思う?」
「やはり、地の利だな」
 第一にこれが浮かぶ。
更にあるようにセレンはアリスを見たから彼女は考えを巡らせた。意外と早く二つ目も心に浮かんだ。
「次は、相手の補給線が長くなる……」
 そして、焦土作戦を行っているからアエテルヌムは食料を現地調達しにくい。畢竟、補給は本国かデルタ3ヶ国からの輸送に頼ることになる。
敵の将軍は軍を進めてその主要な都市の荒廃ぶりにびっくりするだろう 「そう。そして、この戦争は始まって日が浅い。敵は点と点、それを結ぶ線しかこの国で維持できていない。面を支配するには時間が足りない。それに勝利を重ねていて目先の利に囚われ過ぎていると思う」
「だから?」
「だから、そう、補給線の特定が容易い。そしてその量は膨大だ。遠征軍は8万。一日滞っただけで影響が出てくる。それに兵站の維持は最も難しい。いきなり将軍になった人間に上手くできるとは思わない。加えて敵地を縦断して送ってくるんだ」
 ここまで説明されればどういう作戦を彼が思い描いているのか特定することは容易かった。
「兵站を断つのか?」
「私なら、そうする」
 そして、彼は国王陛下もそれを採ると信じて疑っていないように見えた。アリスもそれが老王の策略のような気がしてきた。少なくとも筋は通る。戦闘で負けるならそれ以外の要素で勝てばいいのだ。かなり傷は深いだろうが、負ける可能性は高くないように思えた。
 不安定要素はいくつかある。相手のいることだから当然ではあったが。
だが、それらも1度踏み込んできている以上、優位を揺るがすほどではないだろう。
 つまり勝つ可能性は高い。しかし、そうだとしても1度は圧力を跳ね返すだけの勝利が必要かも知れない。ずるずると行き過ぎても不利になるだけ、冬になるまでに決着をつけないといけないのはガラッシアの方だ。敵に時間を与え過ぎないというのがこの作戦の要であることは間違いない。
「この役目に私は願い出るつもりだ」
 真面目なままセレンはそう言った。
「どうして?」
 もうこの作戦で行くことが確定的であるようにセレンは喋り、その断定には些か不審な点を覚えたが指摘することは止めにした。
「私以外にできる者はいないよ」
 自嘲めいた笑みは言外にこの作戦を批判しているようにも見える。
「大した自信だな」
 どちらにしても、分不相応な自信だろう。たかだが20歳くらいの若者が最も重要な役割の一つを担うなんて余程の背景を持っていなければ不可能だ。それを彼が持っているのかは分からない。持っていても不思議ではない感じはしたし、今までの経歴はかなり特異ではある。
「まぁ、見ているといい。言った通りになる」
 強気の姿勢を崩さないでセレンは会話を終えた。
 それからは、他愛のない話に切り替わり、アリスが報告書の作成に手間取っていることを話題に出すと、少しばかり意地悪に口の端を上げ
「秘書を貸そうか?」
と言われたので、プライドを擽られたアリスは頑として断った。
そうして夜は更けていった。


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