56.

 ポロポロとあるところでひっかかり、あるところで間違える下手な竪琴の音が伝え聞こえてくる広間に国家の重鎮が首を揃えていた。両元首とその右腕だけの内内の会談だった。
季節は2月の終りで寒さが緩もうとしているところだ。部屋には垂れ幕が掛かっており、火鉢がいくつか置かれている。日差しは弱く儚かった。4人は中央の膝ほどの高さのテーブルを囲っていた。奴隷に思い思いの飲み物を運ばせ、随分と打ち解けた様子を演出している。とはいうものの、主宰であるところのセレネスがもたらした情報は場の空気を張り詰めさせるのには十分過ぎるものだった。
「アエテルヌムは圧政を強いていたというわけですか」
 静まり返った広間にヘリオスの声が響いた。
「そうだ。ラシェルが耐える気をなくした」苦虫をかみつぶしたような顔でそう兄は吐き捨てた。
「随分と親し気に呼ばれるのですね」クラウディウスが嫌味っぽく言い、セレネスはそれに目を流した。
「昔、個人的に彼女を助けたことがある。アリスもだ」
 一座の視線が慎ましく控える女性に向けられたが彼女はその動きに何ら反応を示さなかった。固く自らの領分を守っている。今日は濡れ烏の髪のサイドを残してアップにしていて、いつもは見えない項が覗いている。思わず目を逸らしそうになるほどの、美しさだった。特にシオンに舞い戻ってからは王宮の最先端の流行で飾られて、最早だれも寄せ付けない。アリスは今までは元老院議員の中でその出自の低さを蔑まれる程度の存在でしかなかったが、今や宮廷という人々の欲と虚栄心で塗り固められた場所で、嫉妬の眼でもって見られている。
兄が好色であることは周知で、多くの人間が寵愛を得ようと躍起になっている中で、その芽を完全に摘んでしまったと思えるほどの輝きは目障りな事この上ないだろう。
この分だとアリスに近づく家も出てきそうだが、既にコルネリウスとの仲が深く、かの家は流石に常に主流であり続けていると思える強かさだった。
「ラシェルは妹のようなものです」声音はキタラ竪琴の音のようで、彼女に欠けるものはないと思えるほどだ。
「なるほど。それでガラッシア派と目されていたわけですか」  長い手を伸ばしていたのだと初めて知って、ヘリオスは感心したが、兄は嘆息した。
「もう少し、思慮深いと思っていた。破滅的な道を自ら選ぶとは」
 兄の思い描いた計画がどれだけ壮大かはヘリオスの範疇を超えていたが、少なくともそれは既に潰えた。そして、セレネスが無策でヘリオスやクラウディウスを呼びつけるとはちょっと考えられなかった。
「彼女の決断がどうガラッシアに影響を及ぼすと考えておられますか?」
 そう水を向けたら、兄はにやりと笑った。
「デルタではアエテルヌムに抗しきれんよ。例え幾らラシェルが優秀だとしてもだ。持ち得るものの差はそれを可能にしない。またそうであっては困る。そして、我々としてはただデルタが蹂躙されるのを座視するわけにもいかない。アエテルヌムがデルタを完全に支配することはガラッシアにとって致命的になるからね。故にどんな理由ででも介入しなければならない」
「その為のこの体制とも言えるわけですからね」
 ヘリオスの言葉にセレネスは頷いた。兄がその本性を曲げてまで耐えているが、それもいつまで続くか判らない。ヘリオスは兄の癇に障らないように注意深く振舞ってきた。しかし兄は許さないだろう。判り過ぎる程判っているが、それでも一縷の望みに縋っていたくてあまりそのことは考えないようにしていた。
「いまは法学者どもを集めてどんな大義名分が立つか検討させているところだ」
 兄のその一言はヘリオスからその考えから引き離すのに絶好だった。
「見つけられますか?」
「見つけ出す。――例えば、イウェールとの国境は開いていたな?」
「ええ、平和を得ていたので」
「であるなら、両国の人間を互いの国で見出すことは簡単だろう。商人なら確実に1人は入っていると考えてよい」
 言うところをはかりかね、要領を得ないまま頷く。
「だろうと思います」
「そうならば、楽に見つけられる」
 クラウディウスは気付いたらしく、その苛烈な眼差しでセレネスを仰いだ。
「国家の為に死ねと仰られるのか」
「違う。私の為に、死ぬのだ」
 即座に、事も無げに言いのけた。その言葉に込められた矜持の高さに当人だけが無関心だったようで、皆が呆気に取られた中、兄は顎を指で撫でながら思考を進めた。
「しかし、時間は掛かるな。――ラシェルが耐え切れるかどうか。なにしろ手勢が少ない」
 兄の呟きに答えたのは兄の言葉に一番、馴れていたアリスだった。
「一年近くは保たせられます。新しい総督の赴任と同時に反乱を起こしていますから、彼の思惑を完全に外しています。加えてアエテルヌムの軍団の維持にはラシェルの協力が欠かせません。総督は軍団の維持に多大な努力が必要となるでしょう。それに地勢に通じています。彼女は相当に粘り強く戦いを続けられるのではないでしょうか」
「そう上手くいけばいいが」
「勿論、ラシェルとその呼応者たちが常に賢明であるとは思えませんが、それを加味しての一年です」
 満足そうに兄は笑んだ。
「君の分析に賭けよう。しかし、一年は、理由を作るには最低限の時間だ。なんでもよいのだ。私が挙げたものでなくてもな。クラウディウス、この件は元老院を通さなければならない。そちに一任する」
 小さくクラウディウスが頭を下げる。
「しかし、開戦するとなると、元首の妻が敵国の姫になることになります」
 政治的には小さい問題でもないし、ヘリオスの心を大きく捉えていることでもあった。
「クラウディアがいる。権威に傷がつくことはない」
 ヘリオスの意図したところと兄の捉え方が違い、彼はじっと兄の顔を見詰めた。ヘリオスとティルキルティスの仲は悪くなく、むしろどうにかして、兄との間を取り持とうと尽力していたが、今のところそれは成功していなかった。ちらとヘリオスは目の前にいる麗人に目を移す。視線に気付いたらしくアリスはヘリオスのほうを向いた。力強い視線だ。こういったタイプが兄の好みなら、ティルキルティスの分は悪いかも知れない。アウグスタは芯は強いかもしれないが従順だ。
「所詮、それはこの火急の時において些末事に過ぎません」
 アリスがヘリオスを捉えたまま言い、愛人に助け舟を出した。それはアリス自身がティルキルティスの話題を好まないからかもしれない。この4人の中であっても彼女は自らの意志を反映させることは容易い。
「小娘が減らず口を叩きおる」それが癇に障ったのか忌々しげにクラウディウスが吐き出した。
「クラウディウス」
 間髪を入れずセレネスが掣肘し、結局の所、話が流れ、兄の思惑通りになった。
「陣容は?」
 ヘリオスが水を向けると、セレネスは考えを既に固めていたのであろう、少しも言い淀む様子を見せなかった。
「私が行く。副将としてアリスに指揮権を与えて同行させる。第8軍団、そして私兵だった軍団を全て正式に編入し、第11軍団、第12軍団、第13軍団とし、それも伴う。それに付随する補助軍団だ」
 南部属州の子飼いを使い、総勢で30000程度になるということか。壮大だ。
「新たに軍団将校を任命しますか」
「何人か。アリスに選ばせる」
 小さくアリスが頷いた。長く垂らしたサイドの髪が揺れる。 「元老院からは2人の推挙を許す。選任はクラウディウスに一任することにする」
「アリスを補助する形になるでしょうか?」
「ああ、直接に軍団と関わり合いを持つことはない」
 ということは、元老院からの選任は監視の任を帯びることになる。それを堂々とクラウディウスに任せるのだから豪胆だ。
「ラシェルから使節が送られてくるはずだ。それから、軍団の準備をせねばならないが、できるだけ早く集結できるように整えさせておく。南部属州の調練はアリスの激しさで有名だったから、最前線のように振舞っても不自然ではないだろう」
 いつのまにか、竪琴の下手な音が止んでいた。と気付いたのと同時に、静かに兄の秘書が広間に入って来た。アリスの妹だ。姉と同じの黒髪が姉と違って緩くウェーブが掛かっていて踊っている。広間を覗った時にちらりと合ったエメラルドの瞳の輝きが姉に劣らぬ美しさを放っていた。彼女はヘリオスにもクラウディウスにも物怖じせず、小さく頭を下げてから、セレネスの方に歩み寄り、何事か耳打ちした。セレネスの眼差しが急に鋭くなり、ロザリアを見返した。それにロザリアは頷く。
「こちらに通せ」そう言ってロザリアを下がらせてから、此方を向き直った。「丁度、件のラシェルから使節が送られてきたようだ」
 入って来た使者はぼろぼろに汚れており、使節というより伝令のようだった。正式に同盟や支援を求めてきたのではなく、既にそれが成っているとイウェールの支配者が考えている証だろうと思われた。使節は小さく何重にも折れ固められた密書をロザリアに手渡した。
 セレネスがロザリアにそれを開き読むように言った。四苦八苦した様子でようやく書簡を開いた彼女は1度咳払いをし、明朗とした声で彼女は鎮座する歴々にデルタの支配者の意を伝えた。
 書簡からはガラッシアに援助を請うにも関わらず、一本芯の通った毅然としたものが感じられたが、肝心の内容はセレネスが言った事をさも深刻ではないように取り繕って述べてあるに過ぎず、ただ、セレネスの認識の正確さを証明するだけに過ぎなかった。
 しかし、援軍の下りだけは文中で二度以上触れられており、非常に心配しているのがありありと伝わった。
 ロザリアが読み終えると、兄は手を振ってそれを畳ませ、彼女を下がらせてから、言った。
「私の正しさが証明された。これで、幾分の不安は除かれたかと思うが? 返信は私が考えて済ましておく」
 歴々は一様に同意を示すしかできなかった。場が白けかけ、口に出そうか刹那、躊躇う仕草を見せたクラウディウスが、意を決してセレネスに問うた。
 「ですが、この件に関しては、全く懸念は抱いておりませんが、国内情勢においてはそうとばかりは言っておられません」 「スッラか?」と兄は眉を上げたが、それに同意など不要だった。
「懸念を消し去るには時間がない。捨て置くしかない。解決を図るならルフィヌスを呼び戻せ」
 兄はクラウディウスに多少の譲歩をしていた。スッラの件は表面化すれば名を落とすのはルフィヌスになる。その判断を政敵であるクラウディウスに委ねるということはそれも已む無しということだ。政治において兄は本性と比べて格段に我慢強い。
「それが嫌なら、どうにか現状を維持するように努めるのだ。しかし、できることはあまりあるまいな」
 兄がそう言明したからには、ヘリオスとクラウディウスの責任は大分減ぜられる。一様に二人は頷いた。
 スッラの問題はそれだけ微妙だった。
 兄がもう用は過ぎたと言う様に席を立ったので、ヘリオスとクラウディウスは腰を上げ、挨拶を述べて、兄の前から辞した。逍遥回廊に出ると丁度、ティルキルティスが侍女を伴って回廊を広間へ向かっていて、ヘリオスはそれを待った。挨拶をすると彼女は物悲しそうにヘリオスに笑い掛けた。
「お仕事ですか?」
「ええ、国家の重大な案件です」知らず、固い調子になった。
「ご苦労様です。私の処遇はどうなるでしょう? 離縁、させられそうですか?」
 大方の事情を飲み込んでいる聡明で慎み深い得がたい女性だろうに、とヘリオスは彼女を惜しむが、ともかく、その問いに首を振った。
「いえ、兄の口からそのようなことは一言も。何も、今までと変わらず。兄がこれを機にどうこうすることはあり得ません。ただ、少々、世間は厳しくなるでしょう」
「それは甘んじて受け入れましょう。ですが、ヘリオス様、これだけは信じて頂きたいのですが、私はガラッシアに輿入れした、その時からあの人だけに、引いてはガラッシアのみに忠誠を誓っています。私の故国と敵対しようともそれが揺るぐことは絶対にありえません」
「ええ、分かっています。大丈夫です。私がシオンに残りますから、何の懸念も生まれません」
 その一言に、安心したように頷いた。兄から支えを得られないから、精神的に苦しいのだろう。
 彼らがそこで時間を潰していたからか、セレネスが返信を終えたのだろうアリスとロザリアの姉妹を伴って現れた。アリスは決してティルキルティスと目を合わせようとはせず、それをティルキルティスは怖れているようで不安げな眼差しを向けていた。セレネスの信頼が最も厚く、意向を左右できる相手を本来なら最も近き者が怖れている。だが、ティルキルティスの怖れは的外れだった。彼女はアリスを夫婦を害する存在と考えているようだが、そしてそれは外観は決して間違ってはいないのだが、セレネス自身がティルキルティスに自らの不完全さを見出していてそれを嫌悪していることに気付いていない。寧ろ、アリスの存在は事実を覆い隠そうとするように光を浴びているので、誤解を助長させている。この事実が何を意味するかは分からないが、この主従の結束の強さは何も男女であるからだけではないということは確かだった。
 セレネスは内心を露とも感じさせずにティルキルティスの手を取ってキスをした。
「お変わりないかな」
「ええ、あなた。おかげさまで」
 ぎくしゃくとした風であり、ティルキルティスは頑ななセレネスの心を解かす取っ掛かりすら掴めていないようだった。
「すまないが失礼するよ」
 名残惜しそうなティルキルティスを早々に離し、セレネスはアリスを連れて回廊をずんずんと進んで行った。
「兄は今、目下の問題に対して頭が一杯なのです」
 ヘリオスに振り返ったティルキルティスの哀しげな眼差しに同情せずにはいられなかった。
「では、きっと永遠に問題を抱えておられるのでしょうね」



 クラッシアヌスは南部属州で微かな失望を感じていた。総督と財務官が去り、属州の立ち直りは目に見えて遅れだしているのだ。抱いた懸念は当っていた。いくら元首が優秀だろうと短い時でどれだけのことができるというのだ。しかし、ともかくも最悪は取り除かれ、それを喜ぶべきなのだろうか。
セレネスは勿論、アリスも十分な指導力を発揮していた。そして、確固たる意志があった。特にアリスの指示は簡素でかつ、一つの理論に貫かれていた。だから、彼女は支持を集められたのだし、クラッシアヌスたちは夢を見られたのだ。それが後を襲ったホルタスは彼女の影をちらりとも感じさせない。これでは、セレネスに対する印象も悪くなる……
 通常のシオンの貴族はこんな属州に興味もないし、私利を追及するものだ。そもそも、ホルタスは軍団将校に過ぎず、いくら有望であろうとも、それはいつか来る未来でその実力が期待されているにすぎない。セレネスやアリスのように、まこと、天凛に恵まれている人間はそうそうない。多く軍団将校を見てきたが、ホルタスは確かに潜在的な能力に恵まれているように思える。だが、彼はトップに立った時の自制心が足りない。責任感もだ。いずれ完成されるべき器であり、今はそれを満たす水を注ぐべき時だ。穏やかな流れは器を徐に満たすだろうが、滝の水量では壊してしまうだろう。
 彼の娼婦を集めての放蕩三昧は、著しく声望を損ねることになり、逆に兵士たちからの人気は増した。散財は兵士たちの臨時収入となったからだ。
 クラッシアヌスが公邸を訪れた時、大きな扉を潜った時から乱痴気騒ぎと淫靡な香りが出迎えた。
 すぐにホルタスを認めることができたが、彼の許に辿りつくには、女どものしな垂れてくる腕を振り払わなければならなかった。
「おお、クラッシアヌス。どうした、ハンサムが台無しだな」
 酔っぱらったホルタスがゴブレットを持ちながら、腕を回してくる。
「レガートゥス、酒が過ぎているようですな」
「細かいことをいうな。愉快にすべきではないかな」
 この場で正気を保っているのはクラッシアヌスのみだった。ぐるりと回りを見渡してみても、ホルタスを正すべき同僚たちは彼と同じように、この場に酔い、娼婦共の腕に抱かれている。 「失礼。元首から、書簡が届いています」
封印された書簡を携えていたのさえ、見えていなかったようで、ホルタスの前に突き出してようやくその存在に気付く始末だった。
 ホルタスは定まらない手でそれを受けようとしたが、取り損ね、あわててクラッシアヌスが取り直して、胸に押し付けるように突き出すと、ようやくちゃんと受け取った。それを覚束なく開封し、酔っ払った目で内容を確かめる。しかし、反応はしっかりとしたものだった。
「ほう。これは」
 そして、畳んだそれをクラッシアヌスに突き返した。真面目な色を宿した瞳に大きな展開があることの示唆を感じた。
「4日後に模擬戦を全軍団内で行う。主席百人隊長に通達を出しておけ。規模は1個大隊だ。精々鈍った身体を動かせられるようにしておけ、と」
「御意」
「そして、そうだな。明後日でよい。第8軍団以外の隊長たちを出頭させるように」
 その要請にもクラッシアヌスは頷いた。すると、それで安心しきったようにホルタスはまた放蕩に染まった部分を表に出して、クラッシアヌスに酒を突き出した。
「まあ、今日は遊べ」
「失礼します」
 無視し、彼はこの狂った空間から抜け出した。
 二日後のこの退廃的だった大広間はすっきりと整頓され、たくさんの空気を取り込む春の息吹が感じられる清々しさに満ちていた。
 ホルタスは次々と来訪した隊長たちを歓待し、各々を座らせた。
「模擬戦の準備は進んでおられるか?」
 一同の苦笑で受け取られた。
「また急なことで、兵たちの体力を取り戻すのも大変です」
 勿論、殆どの兵が放縦の限りを過ごしていたのだから、さもあろう。
「今度の模擬戦は始まりに過ぎません。これから軍団は元の強さを取り戻す必要がある」
 そう言うと、にわかに隊長たちの眼差しが鋭くなった。
「一体、誰の指揮下に入るものでしょうかね」
「我々の司令官は決まっている」
 そこでホルタスはぐいと身体を乗り出して、言葉に熱を込めた。
「いいか。我々は元首の子飼いなのだ。兵には矜持を持たせろ。例え、他の連中が第一軍団とかといって気後れする必要などないのだ。元首は我々を最も信頼している。どこの何よりもまず我々だ。親衛隊にすら勝る。その軍団はこの国で最も精強でなければならない」
「例え、正規でなくとも?」
 冷笑気味に返されたが、それも当然だった。この場にいる人間は正規の軍団ではない。セレネスが逆賊を討つために募った義勇兵たちであり元老院の承認を受けていない者たちと、逆賊たちが組織した反乱軍の捕虜たちから作られた軍団で、そのために正当な評価を受けられずにいた者たちだ。
「彼は貢献に報いる。喜ばしい報せを私は持っている」
 ホルタスはそこで勿体ぶって
「おめでとう、あなた方はシオン市民となる。設立時期の順に、第11、12、13軍団となる。兵士たちも全員、市民権が与えられる。模擬戦ではシオン市民の誇りを見せよ」
 一様に隊長たちは頷いた。第8軍団以外はこれによって高い士気を保つことになるだろう。そして第8軍団はアリスの子飼いというプライドがある。国内のどの軍団より士気は高い。
 模擬戦は乾きつつある空気の気持ちよい掃天の元で行われた。ガラッシアの調練は血の出ない戦闘と呼ばれるほど激しいので有名だったが、今回のものは不養生が祟ってそこまで鬼に迫るものはなかった。
 だが、全ての隊で銀鷲の軍旗が掲げられていた。


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最終更新日 : 10/3/27

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